治療期間について
可能な限り効率を考えた治療を
患者さんから「どれくらいで矯正治療が終わりますか?」という質問をよくいただきます。
治療技術や素材の進歩に加え、長年にわたり矯正治療の臨床と研究の現場に携わり、時間の無駄がない治療を心がけています。また、矯正治療は技術がどんどん新しくなるため、かつて勉強したことはすぐに古くなってしまいます。そのため、既存の方法に囚われることなく、治療法を改良して取り入れることを目指しています。
早く動かそうと無理に強い力をかけてしまうと、かえって「痛み」や歯の根っこが短くなる「歯根吸収」などのリスクを抱えることになります。当院では、治療の進行状況に合わせてきちんと手順を踏んで良い結果に繋げています。
歯科矯正用アンカースクリューによる治療
歯の欠損を補うために施されるインプラント治療と同じ原理を応用し、矯正治療の期間中に小さなネジを口の骨の中に埋入する方法です。
骨に固定しているネジの「動かない」利点を活かし、歯を引っ張るための支柱として利用します。従来の歯と歯を相互に引っ張り合う方法は双方の歯が動いてしまうため、大幅に動かしたい歯が充分動かなくなりますが、歯科矯正用アンカースクリューを埋入すればインプラントを固定源として、対象の歯を予定通りに動かす確実性が増しました。
歯科矯正用アンカースクリュー使用のメリット
- 治療期間が短縮されることがある
- 矯正装置がシンプルになる
- 不動の支柱が確保され、難しい治療を成功させやすくなる
歯科矯正用アンカースクリュー使用のデメリット
- 埋入するための処置が必要になる
- 外れた場合は再度埋入する必要がある
生涯にわたり健康的な歯並びと咬み合わせの維持を
人の歯並びや咬み合わせは、生涯変化し続けるものです。年齢やライフステージという様々な要因を受けて歯は動き続け、歯の周りの組織も変わり続けます。
例えば、高年期は咬む力があってもその力を受け止める側の歯や歯茎の骨がどんどん弱くなり、咬み合わせがうまくいかなくなります。そのため、成長期や20~30代の若い世代から将来を見越した予防管理や矯正治療が重要になります。
矯正治療に年齢制限はなく、条件が整えば治療が可能です。当院では、年代に即した健康的な歯並びと咬み合わせの維持をお手伝いします。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用
- 治療開始当初は矯正装置による不快感、痛み等があるものの、数日から1~2週間で慣れることが多いです。
- 歯の動き方には個人差があるため、想定した治療期間より延長する可能性があります。
- 装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正歯科治療には患者さんの努力・協力が必要不可欠です。それらが治療結果や治療期間に影響します。
- 治療中は、装置の装着により歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まるため、丁寧なブラッシングや、定期的なメンテナンスが重要になります。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
- 歯を動かすことで歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきが痩せて下がることがあります。
- ごくまれに歯が骨と癒着し、歯が動かないことがあります。
- ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受け、壊死することがあります。
- 治療中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
- 治療中に「顎関節で音が鳴る、顎が痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
- 様々な問題により、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
- 歯を削ることで歯の形を修正したり、噛み合わせの微調整を行う可能性があります。
- 矯正装置を誤飲する可能性があります。
- 装置を外す際、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
- 装置を外した後、保定装置を指示通り使用しないと後戻りが生じる可能性が高くなります。
- 装置を外した後、治療により変化した噛み合わせに合わせてかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやり直す可能性があります。
- 顎の成長発育により噛み合わせや歯並びが変化する可能性があります。
- 治療後に親知らずの萌出などの影響で凸凹が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせると噛み合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になる場合があります。
- 前歯を後退させた治療後に、ほうれい線が深くなったり、口唇周囲の皺が目立つようになる可能性があります。
- 矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。